オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

浜口庫之助の音楽~「バラが咲いた」に思う~

 前々回のブログで「スリー・グレイセス」を取り上げ、世俗の中にある聖なるものについて記しましたが、その関連で、歌謡曲の世界ですぐに思い浮かぶキリスト者の作曲家が浜口庫之助です。
 浜口庫之助は1917年神戸市生まれで、愛称はハマクラです。一家はキリスト教信者で、彼も日本基督神港教会で受洗しました。40歳から作詞・作曲家を志し、幅広いジャンルにまたがって数多くの作品を世に送り出ました。 代表作に「黄色いサクランボ」「バラが咲いた」「夜霧よ今夜もありがとう」「空に太陽がある限り」等があり、その生涯で発表した数は約5000曲と言われます。私は代表作100曲を集めたCD4枚組「浜口庫之助メモリアルコレクション100」を愛聴しています。

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 彼の曲で、キリスト者らしい曲としては「バラが咲いた」があげられると思います。1966年にマイク眞木でヒットし、 浜口庫之助作詞・作曲でレコード大賞作曲賞を受賞しました。次のyoutube で見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=SZiXquwF5vA&feature=youtu.be

歌詞はこうです。

「バラが咲いた バラが咲いた 真赤なバラが
 淋しかった ぼくの庭にバラが咲いた
 たったひとつ 咲いたバラ 小さなバラで
 淋しかった ぼくの庭が 明るくなった
 バラよ バラよ 小さなバラ そのままで そこに咲いてておくれ
 
 バラが咲いた バラが咲いた 真赤なバラで
 淋しかった ぼくの庭が 明るくなった
  バラが散った バラが散った  いつの間にか
  ぼくの庭は 前のように  淋しくなった
  ぼくの庭の バラは散って しまったけれど
  淋しかった ぼくの心に バラが咲いた

  バラよ バラよ 心のバラ いつまでも ここで咲いてておくれ
  バラが咲いた バラが咲いた ぼくの心に
  いつまでも 散らない 真赤なバラが  」

 この曲の裏話等は、彼の唯一の著書「ハマクラの音楽いろいろ」に記されています。

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 それによれば、『朝起きて、良い気分で庭を眺めていたら、緑のなかに赤いバラが一輪、ふわっと咲いているのが見えた。「あっ、バラが咲いたな」と思って、そばにあったギターをとって「バーラが咲いた」とやったら、そのまま歌になってしまった。』とのことです。
 また、この曲はサン=テグジュペリの『星の王子さま』のバラをイメージして書かれたものだそうです。
 私は、浜口庫之助の幼い頃からのキリスト者としての在り方がこの曲を生んだように思います。メロディーはそれまでの歌謡曲のような暗さがなくすがすがしく、まるで讃美歌のようです。歌詞もシンプルで童謡や唱歌のようです。
キリスト教の世界では、赤いバラはキリストの血と炎のような慈愛を表します。
さらに言えば、バラはイエス様そのものであるように思います。この世界(僕の庭)に降臨されたイエス様(赤いバラ)によって私たちに「希望」が生まれました。十字架(庭のバラが散る)によって一時は淋しくなりますが、それで終わらず復活して私たちに「永遠の命」が与えられる(心に咲き続ける)ということではないのでしょうか?
 浜口庫之助は1990年に73歳で逝去し、富士見町教会で葬儀が行われました。しかし、残された多くの名曲は生き続けています。まるで庭のバラは散っても心のバラが咲き続けているようにです。「赤いバラ」は、私たちに与えられた永遠に続くイエス様の恵みであり、神の愛であると私には思われます。