オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

讃美歌「うるわしの白百合」に思う

 先々主日の説教で朝ドラ「エール」で薬師丸ひろ子演じる関内光子が空襲で家を焼かれ多くのものを失い讃美歌「うるわしの白百合」を歌うシーンについて言及し、ブログにもアップしました。この讃美歌について、ブログを読んだ信徒の方から「祖母の愛唱歌で、私も大好きです」等のメールが来ました。多くの日本人の信徒にこの讃美歌が親しまれてきたことを思います。私にとっても、ここのところこの讃美歌がずっと頭の中で流れ口ずさんでいる状況です。
 私が聞いているのは国分友里恵のCD「君もそこにいたのか」の収録曲です。

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 下のアドレスから美しい映像と共に聞くことができます。
https://www.youtube.com/watch?v=RyliNxiSmis&list=RD2gGEJ4ZH4Ws&index=2

 この讃美歌496番の歌詞はこのようです。

1.うるわしの白百合 ささやきぬ昔を、
  イエス君の墓より いでましし昔を
  (おりかえし)
  うるわしの白百合 ささゆきぬ昔を
  百合の花、百合の花 ささやきぬ昔を

2.春に会う花百合 夢路よりめさめて
  かぎりなき生命に 咲きいずる姿よ
   (おりかえし)

3. 冬枯れのさまより 百合白き花野に、
  いとし子を御神は 覚(さま)したもう今なお
    (おりかえし)

 以前、「唱歌・童謡とキリスト教(1)」で言及した大塚野百合の「賛美歌・唱歌ものがたり」やウィキペディア等から、この讃美歌についてはこうあります。
『讃美歌 (1954年版) 496番「うるわしの白百合」 - 原題は「Beautiful liles, white as the snow」。白百合の花に寄せてイースターの出来事を暗示した歌詞であり、旋律の美しさから日本で広く歌われる。
  作詞はAlice Jean Cleator(1871年– 1926年)。イギリスのマン島に生まれ、アメリカに家族と移民し、教師をしながらオハイオ州で日曜学校のための讃美歌の歌詞を生涯で200以上作詞する。「うるわしの白百合」「ちいさなかごに」等。
 作曲はJ.Lincoln Hall(1866-1930)。ニューヨークにおいて楽譜の出版社を経営し、素人ながら日曜学校用の歌に作曲した。カンタータ、オラトリオ、聖歌合唱曲、数百の讃美歌を作り又、幾つかの讃美歌の編集をした。』

 讃美歌496番「うるわしの白百合」は日本語としても美しい歌詞、メロディーも優しい調べでそれが日本人の心に響いたと思われ、多くにキリスト教主義学校で歌われ親しまれてきました。葬送式のおりに故人の愛唱歌として歌われることもあります。薬師丸ひろ子は母校である玉川大学の礼拝堂で歌ったそうです(創立者の夫人の愛唱歌だったとのこと)。朝ドラ「エール」の関内光子は金城女学校出身ということになっていますが、金城では「うるわしの白百合」は第2校歌のように歌われていたそうです。
 しかし、この曲は「讃美歌21」には採用されませんでした。それは「讃美歌略解」に記載されている「宗教的内容は貧弱である。現代のアメリカの歌集にもほとんど見出されない」ということが理由かもしれません。同じ作詞者の作品である讃美歌第二編 26番 「ちいさなかごに」も多くのキリスト教主義学校で歌われ(本田路得子のCDにもある)、私も好きな讃美歌ですが、「讃美歌21」には採用されませんでした。なんとも残念なことであると思います。

 「うるわしの白百合」の原詩はこうです。
 
1 Beautiful lilies, White as the snow,
  Speak to us softly Of long ago;
  Telling of Jesus, Who from the grave
  Rose all victorious, Mighty to save.

 Refrain:
  Beautiful lilies, White as the snow,
  Speak to us softly Of long ago;
  Beautiful lilies, Beautiful lilies,
  Speak to us softly Of long ago.

2  Lilies of Easter, Blossoms of spring,
  Wake from their slumber Gladness to bring.
  O they are ever Heaven's bright sign
  Of life beyond us, Endless, divine.
 [Refrain]

3  E'en as our Father From winter's night
  Waketh the lilies To summer's light,
  So His dear children His love will keep,
  Waking them softly From death's long sleep.
  [Refrain]

 優しい英語で綴られ、graveとsave、springとbring、signとdivine、nightとlight、keepとsleep、というふうに韻を踏んでいます。

 訳してみます。

1 美しい百合、雪のように白い、
 私たちにそっと昔のことを話してください
 墓よりよみがえったイエス様のことを
 全て勝ち 力強く救う方のことを
 リフレイン:
 美しい百合、雪のように白い、
 私たちに昔のことをそっと話してください
 美しい百合、美しい百合,
 私たちに昔のことをそっと話してください

2 イースターの百合、春の花、
 眠りから目覚め 喜びをもたらす
  百合の花永遠に 天に輝きを印す
  命は、私たちのかなたに 終わりなく、聖い
  リフレイン:

3 なおも私たちの父は 冬の夜から
  百合を目覚めさせる 夏の光へと
  そのように彼の愛する子供たちを 父は愛し守るでしょう
  彼らを優しく死の長い眠りより目覚めさせて 
  リフレイン:

 英語の原詩より讃美歌の日本語詞の方が無駄がなくて、心に響くように思います。speak softlyは直訳すると「そっと話してください」ですが、それを「ささやきぬ」と歌詞にしたのはさすが、と思いました。

 この讃美歌は、ペトロの手紙一、1章3節に基づくとあります。こうです。
「私たちの主イエス・キリストの父なる神が、ほめたたえられますように。神は、豊かな憐みにより、死者の中からのイエス・キリストの復活を通して、私たちを新たに生まれさせ、生ける希望を与えてくださいました。」(聖書協会共同訳)
 この節から始まる箇所の小見出しも「生ける希望」です。神様はイエス様の復活という出来事を通して私たちを新生させ希望を与えてくださった、と言うのです。

 朝ドラ「エール」の第90話で薬師丸ひろ子が演じた約3分間の独唱シーンが話題になっていますが、このドラマのキリスト教考証をつとめる西原廉太主教様は、「あのシーンには『死』から『復活』へという、神学的なメッセージが通奏低音のように流れている」と語っています。戦争で多くの人が死に、多くのものを失いましたが、歌い終わって十字架をつかむ美しい場面で象徴されるように、キリストの十字架と復活によって私たちが新たに生かされるのであります。そしてドラマではこれから戦後の復興(復活)が始まりますが、それができるのは神様が私たちに「生ける希望」を与えてくださるからなのです。
 聖歌・讃美歌は「歌による祈り」であり、「神様の御心を行うことのできる秘訣は祈りにある」と説教で話しましたが、このシーンを再度見て新たな気づきが与えられました。それはこのようなことでした。
「イエス様は壮麗な聖堂の中にとどまらず、この焼け跡におられる。イエス様は戦争で傷ついた人々の悲しみと苦しみをすべて、味わっている。そして「うるわしの白百合」を歌う光子の隣りにいて、一緒に涙を流しておられる。それをご覧になっている天の神様は、イエス様を復活させたように光子をはじめ戦争で傷ついた人々を新たに生まれさせ希望を与えようとしてる・・・」

 讃美歌「うるわしの白百合」からこのようなことを思い巡らしました。
 聖歌・讃美歌にはすごい力があると実感しました。これからも歌詞の意味を理解し、それを踏まえ心を込めて、神への祈りとして聖歌・讃美歌を歌っていきたいと思います。