オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

「プレスリーとゴスペル(3)」

   前回はエルヴィス・プレスリーの1967年3月にリリースされた「偉大なるかな神 HOW GREAT THOU ART」というゴスペル・アルバムを中心に記しました。エルヴィスはこれにより、プラチナ・ディスク(100万枚以上)と初のグラミー賞“Best Sacred Performance”を獲得し、ゴスペルシンガーとして確固たる地位を確保したと言えます。
 今回は、ポップスシンガーとしてのエルヴィスについて、それだけではない彼の面にスポットを当てて述べたいと思います。

 エルヴィスの本格的な歌手としての再出発は1968年12月3日のテレビ出演「68カムバック・スペシャル」でした。この番組のアメリカの視聴率は42%、瞬間視聴率では70%超だったそうです(日本では8%)。そのクロージングナンバーが、その年に暗殺されたキング牧師の有名な演説「I have a dream.」に応えた「If I can dream.(明日への願い)」です。ここからその映像を見ることができます。この曲をエルヴィスは力強く心を込めて歌い上げています。
https://www.youtube.com/watch?v=mdnL761oLFE

 私の持っているエルヴィスのコンピレーションアルバム「MEGA エルヴィス~エッセンシャル・コレクション」にもこの曲が入っていました。

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 なお、このアルバムには前回紹介した「How Great Thou Art」や「アメリカの祈り」も入っています。

 

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「If I can dream.(明日への願い)」の歌詞と訳詞は以下のようです。

There must be lights
burning brighter somewhere
Got to be birds
flying higher in a sky more blue
If I can dream of a better land
Where all my brothers walk hand in hand
Tell me why, oh why?  Oh why?
Can't my dream come true?
Oh why

There must be peace
and understanding sometime
Strong winds of promise
that will blow away the doubt and fear
If I can dream of a warmer sun
Where hope keeps shining on everyone
Tell me why, oh why? Oh why?
Won't that sun appear?

We're lost in a cloud
with too much rain
We're trapped in a world
that's troubled with pain
But as long as a man
has the strength to dream
He can redeem his soul and fly

Deep in my heart
there's a tremblin' question
Still I am sure that the answer
Answer's gonna come somehow
Out there in the dark
there's a beckoning candle
And while I can think, while I can talk,
While I can stand, while I can walk,
While I can dream
Oh please let my dream come true right now
Let it come true right now

どこかにきっとあるはずだ
もっと明るく燃える光が
どこかにきっといるはずだ
もっと青い空を飛ぶ鳥たちが
よりよい世界を夢見ることができるなら
私達みんなで手を取り合って歩ける
教えてほしい なぜだ なぜだ

そこにはなくてはならない
ときには平和や相互理解が
強い信念の風もなくてはならない
それは疑惑や恐怖を吹き飛ばす
もっと暖かい太陽を夢見よう
そうすれば希望の光を誰にも注ぎ続けられる
教えてほしい なぜだ
どうして太陽は現れないのか?

私たちは雲のなかで迷ってしまう
ざあざあの雨のなかで
痛みに見舞われた世界
私たちはそこに陥れらている
しかし人が夢見る力を持っているのなら
魂を取り戻しはばたけるはずだ

心の奥深くに 怖くて聞けない疑問が一つだけある
わかっている その答えは
とにかくいずれ わかる時が訪れる
はるか向こうの暗闇のなかに
合図のロウソクがともってる
私は考えることができるうちに
私は話すことができるうちに
私は立ち上がることができるうちに
私は歩くことができるうちに
そして 私は夢見ることができるうちに
お願いだ 今すぐ私の夢をかなえてほしい
今すぐ夢をかなえてほしい


 この曲はいわゆるゴスペルソングではありませんが、キング牧師を慕い、人種差別に反対するプレスリーの強い意志が感じられる演奏です。
 エルヴィスは、全米のコンサートツアーのおり、ある州でバックコーラスの黒人女性がステージに立つことを拒否された折り、「それなら私はコンサートを行わない」と言ったそうです。人種差別はじめ、すべての差別に反対したエルヴィスの面目躍如たるエピソードだと思います。その根底には、主の御旨に従う彼のクリスチャンとしての良心があったからと思うのであります。