オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

「ピータ-・ポール&マリーの音楽と信仰」

 ピーター・ポール&マリーという、1960年代に活躍した米国のフォーク・グループをご存知でしょうか? Peter Yarrow, Noel Paul Stookey, Mary Traversのトリオです。頭文字をとってPPMと呼ばれていました。前々回のブログの記事「ジョーン・バエズの音楽と信仰(2)」で、1963年8月28日のワシントン大行進でPPMも参加していたことを記しました。そこでは「天使のハンマー」が歌われました。マーティン・ルーサー・キングの演説「私には夢がある」(I Have a Dream)は、この行進の際に行われました。
 現在、世界各地でBlack Lives Matterの運動が広がっており、また、8月は平和について考える機会が多い月でもあります。そんな折、1960年代に公民権運動や反戦運動等に大きな役割を果たしたPPMに思いを馳せることも意義あると考えます。
 ピーター・ポール&マリーは1962年に「レモン・トゥリー」でデビューし、「我が祖国」「悲惨な戦争」「天使のハンマー」「花はどこに行った」「パフ」「風に吹かれて」「虹と共に消えた恋」「私の試練」「哀しみのジェットプレーン」など、数多くのヒットを飛ばしました。
 ピーター、ポール、マリーのいずれも、英語圏では多いファーストネームであるとはいえ、初期キリスト教に大きな働きをした3名の聖人、ペトロ、パウロ、マリアをグループ名にしているのは何か意味があるように思います。Stookeyのファーストネームは「Noel」なので、普通ならピーター・ノエル&メリーですから、やはり意識してつけたグループ名なのだろうと思います。
 今回はそのピータ-・ポール&マリーの音楽と信仰について思い巡らしたいと思います。
 
 PPMは1962年にアルバム『ピーター・ポール&マリー 1』でデビューしました。「天使のハンマー」が初のヒット・チューンとなりますが、今ではこのアルバムの全12曲がスタンダード・ナンバーです。アコースティック・ギターから弾き出されるピュアな音に溶け込んでいく、ナチュラルなヴォーカル・ハーモニー&コーラス。それは、素朴で優しさに満ちたものです。このアルバムは、7週に渡ってNo.1を獲得、トップ40においては112週チャートインという記録もうちたてています。

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 このアルバムの1曲目の曲がEarly in the Morningです。メンバーのNoel Paul Stookeyの作品です。この曲はキリスト教精神に満ちています。この曲をファーストアルバムの最初の曲としたのは意図あってのことと思いました。
 Early in the Morning (LIVE)はこのサイトから見る(聞く)ことができます。
 https://www.youtube.com/watch?v=sX0X_1t3cUQ&feature=youtu.be

 歌詞はこうです。
『1 Well early in the morning, about the break of day
  I ask the Lord, "Help me find the way!"
  Help me find the way to the promised land
  This lonely body needs a helping hand
  I ask the Lord to help me please find the way
 2 When the new day's a dawning, I bow my head in prayer
  I pray to the Lord, "Won't you lead me there?"
  Won't you guide me safely to the Golden Stair?
  Won't you let this body your burden share?
  I pray to the Lord, "Won't you lead me please, lead me there?"
 3 When the judgment comes to find the world in shame
  When the trumpet blows won't you call my name?
  When the thunder rolls and the heavens rain
  When the sun turns black, never shine again
  When the trumpet blows, won't you call me please, call my name!

 訳してみます。
『1 朝早く、夜明け頃、私は神に祈る
   「どうか道が見つかりますように!」と主に頼みます
   どうか約束の地への道が見つかりますように
    この孤独な男には救いの手が必要なのです
  どうか主よ、お願いです 道を見つけさせてください
 2  新たな一日が明けると 私は頭を垂れて祈ります
  「私を導いてくださいませんか?」と主に祈ります   
     黄金の階段に私を安全にお導きくださいませんか?
   この肉体をあなたの力にしてくださいませんか?
    「どうか私をそこへお導きくださいませんか?」と主に祈ります。
 3 恥辱に満ちたこの世界に審判が下る時
      天使のラッパが吹き鳴らされる時 
      私の名前を呼んでくださいませんか?
     雷鳴がとどろき天界に鳴り響く時
   太陽が暗くなり二度と輝かなくなる時 
    天使のラッパが吹き鳴らされる時 
   どうか私を呼んでください 私の名前を呼んでください!
  
 1節の冒頭の「朝早く、夜明け頃、私は神に祈る」は、マルコによる福音書1:35「朝早くまだ暗いうちに、イエスは起きて、人里離れた所へ出て行き、そこで祈っておられた。」を思い起こさせます。「約束の地」とは、神がイスラエルに与えると約束した土地、カナンの地です。主が忠実に従う者やその子孫​に受け継ぎとして与えると約束された地であり、1節ではその地への道を見つけることができるよう主に祈っています。
 2節の「黄金の階段」は、創世記 28:12のヤコブが見た夢「先端が天まで達する階段が地に向かって伸びており、しかも、神の御使いたちがそれを上ったり下ったりしていた。」の階段、つまり天国への階段と考えます。「どうか私をそこへお導きくださいませんか?」と主に祈っています。
 3節の「天使のラッパ」とは、ヨハネの黙示録で7人の天使たちがならす終末を告げるラッパです。終末の時に私を忘れず「私の名前を呼んでください!」と主に祈っています。
 「Early in the Morning」は1節から3節まですべて主に祈っている歌です。
 ピーター・ポール&マリーはこのように信仰的・キリスト教的な歌を、ファーストアルバムの1曲目の曲に選びました。このアルバムには他にも「This Train」や「If I had my way」などキリスト教を題材とした作品が収録されています。前者では「This Train Is Bound For Glory(この列車は栄光へ向かう)」と歌い、後者では「サムソンとデリラの物語」を歌っています。

 PPM、ピーター・ポール&マリーは日本では「悲惨な戦争」、「天使のハンマー」、「花はどこに行った」などから反戦歌やプロテストソングを歌うグループと理解されていますが、その原点にはキリスト教精神があり、それに基づいて平和や人権等を訴えていたのであります。そのことをおぼえたいと思います。