オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

「プレスリーとゴスペル(1)」

 エルヴィス・プレスリー(1935-1977)はご存知ですか? 今の若い人は名前すら聞いたことがないかもしれません。プレスリーは1950~70年代に大活躍したロックンロール歌手です。私はビートルズ世代の後期で、ローリングストーンズやその後のレッドツェッペリン等のロックバンドに熱中した者で、プレスリーは過去の人のように思っていた頃もありました。
 エルヴィス・プレスリーにはどんなイメージがあるでしょうか? 60年代後半に復活した時、派手な衣装やパーフォーマンスが話題になりましたので、そのようなことを思い浮かべる人が多いかもしれません。晩年かなり太り、42歳の若さで亡くなり死因が「薬物中毒」と報道されましたので、ふしだらな生活をしていたと思う人が多いかもしれません。しかし、ロックンロールの王様と呼ばれていたエルヴィスは、敬虔なクリスチャンでありました。
 私はエルヴィスの死後に彼のゴスペルアルバムを購入し、ロックンロール歌手とは違う一面を知り、そのスピリチュアルな歌声に感動しました。
 これから数回にわたってエルヴィス・プレスリーとゴスペルミュージックやキリスト教について思い巡らしたいと思います。

 主なテキストは『エルヴィスの真実~ゴスペルを愛したプレスリー~』です。

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 この本の著書は、プレスリーのバックコーラスグループだったジ・インペリアルズのメンバーのジョー・モスケイオです。この本では、華やかでスキャンダラスなイメージとは真逆な、敬虔で純粋なクリスチャンとしての実像を知る著者が、生涯ゴスペルを愛し、神への献身を貫こうとした知られざる一面を明かしています。

 この本によると、エルヴィス・プレスリーアメリカのミシシッピー州テュペロの小さな家に生まれ、2歳半から両親に連れられてファースト・アッセンブリー・オブ・ゴッド教会に通い、9歳で洗礼を受けています。しばしば、道一つ隔てただけの黒人教会に行き、そこで説教とゴスペルに耳を傾けていました。そして自分もいつかはゴスペルの歌手になるのだと決めていたのです。
 そして、トラックの運転手をしていた頃に、大好きだった母親の誕生日の贈り物として、 自費で自分の歌をレコードに吹き込みます。それがきっかけで、歌手デビューし、大スターとなりました。しかし、エルヴィス自身は、若者たちに受ける世俗的な曲を歌って人気を得るよりも、ゴスペル部門で3度グラミー賞を受けたことを誇りにしていました(他の部門での彼の受賞はありませんでした)。
 また、エルヴィスは聖書を読むことで、平安と喜びを得て、周囲の人のためにもよく祈っていたそうです。自身のアルバムやコンサート(ショー)にも必ずゴスペルソングを入れていました。

 当時のテレビの人気番組「エドサリヴァン・ショー」に3回出演しましたが、その最後(1957年)の回でゴスペルを歌いたいと申し出たそうです。それがこの曲「PEACE IN THE VALLEY  谷間の静けさ」です。母親のお気に入りのゴスペルとのことです。次のアドレスからその映像を見ることができます。 https://www.youtube.com/watch?v=mslBWuQ-Tjg

 エルヴィスは4人の白人ゴスペルコーラスグループを従え熱唱し、歌い終わったあとエドサリヴァンが「君は本当に素晴らしい」と褒め称えているシーンを見ることができます。

 その曲の原詩はこうです。

(THERE'LL BE) PEACE IN THE VALLEY (FOR ME)

 Well, I'm tired and so weary
 But I meet ge along
 Till the Lord comes and calls
 Calls me away, eh yet
 Well, the morm it se bright
 And the lamb in the light
 And the night, night in black
 As the sea, oh yes
 (There mill he pence in the valley Pen me someday)
 There will he peace in the valley
 For me, 0 Lard pray
 (There will be vs sadness, as sorrow Na trouble, trouble I see)
 There will be peace in the valley For me
 Well, the bear will be gentle
 And the wolves will be tame
 And the lion shall lay down
 By the lamb, oh yes
 And the beasts from the vvild
 Shall be led by a Child
 And III be changed
 Changed from this creature that I air
 Oh, yes

 訳詞はこうです。

<谷間の静けさ>

おお、私は身も心も疲れ果てています
けれども、なお歩みつづけなければなりません
主なる神が私を呼びに来て下さるまでは
主が、私を呼び出して下さるまでは
おお、朝はまばゆく輝き
小羊なるキリストは世の光です
夜はまるで深い海のごとく
黒々と広がっています
その通りの海が

(天国の谷間にはやがてそこへ行く私のために平和が待っていることでしょう)
天国の谷間には私のために平和が待っていることでしょう おお主よ、私は祈ります
(そこには悲しみも不幸も苦しみもありません。今の私の苦しみはありません)

天国の谷間には私のために
平和が待っていることでしょう
熊は従順になり
おおかみは服従
ライオンは羊のかたわらに
寝そべっています
野の獣たちは
主なる御子に導かれます
私の身も今の自分とはまったく違う姿に
生まれ変わることでしょう
おお、その通りです。

 この信仰心あふれるゴスペルソングを歌い終えると、視聴者からすぐに熱狂的な反応が返ってきて、この曲を含む4曲のEP盤が制作されました。これが大ヒットし、やがて全曲のゴスペルアルバムが発売されることになりました。
 テレビ出演の1年後、エルヴィスの母親、グラディス・プレスリーは心臓発作のためこの世を去りました。エルヴィスは悲しみに打ちひしがれましたが、母親の一番好きだったゴスペルコーラスバンド、ブラックウッド・ブラザースを招き、葬儀で歌ってもらいました。
 エルヴィス・プレスリーは比べる者もないほどの大スターとなりますが、生涯、ゴスペルソングを愛し、全身全霊を込めて歌い続けたのでした。