オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

大斎節第3主日聖餐式 『私たちを起き上がらせるイエス様』

 本日は大斎節第3主日。高崎の教会で聖餐式を捧げました。
 聖書箇所は、出エジプト記20:1-17とヨハネによる福音書2:13-22。説教では、「宮清め」の箇所から、イエス様が示した十字架・復活の予告について知り、私たちを起き上がらせるイエス様に思いを馳せ、信仰の歩みを深めることができるよう祈り求めました。ここの「建て直す」と訳されている言葉はギリシャ語「エゲイロー」、英語では「raise~up」であり、この言葉から思い浮かべる曲『You raise me up』についても言及しました。

   『私たちを起き上がらせるイエス様』

<説教>
  父と子と聖霊の御名によって。アーメン

 今日は大斎節第3主日です。福音書ヨハネによる福音書の2章13節以下から取られています。聖書協会共同訳聖書によりますと、今日の福音書箇所の小見出しは「神殿から商人を追い出す」となっています。「宮清め」という呼び方で、この聖書の箇所に親しんでこられた方も多いと思います。
 
 この箇所のイエス様は、私たちの知っているイエス様とかなり違う印象があります。15節・16節にこうあります。
「イエスは縄で鞭を作り、羊や牛をすべて境内から追い出し、両替人の金をまき散らし、その台を倒し、鳩を売る者たちに言われた。「それをここから持って行け。私の父の家を商売の家としてはならない。」
 なぜイエス様はこのようにお怒りになられたのでしょうか? そして、その意味するところは何でしょうか?
 私はイエス様は、表面的な神様への献げ物よりも、心から神様に従い、神様に祈ることの方が、献げ物よりも大事だと言いたかったのではないかと思います。今日の旧約聖書出エジプト記から、神様からモーセ十戒が与えられた場面で、十戒の内容が書かれていました。前半部分では、「3 あなたには、私をおいてほかに神々があってはならない。」とか「7 あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。」とか「8 安息日を覚えて、これを聖別しなさい。」など神の神聖さ、神に従う信仰の重要性が示されています。イエス様の行動はこの精神にのっとったものであると考えられます。さらに、イエス様は人間の代わりに動物を犠牲として捧げる礼拝を廃止されたのだと考えられます。それは、御自分を十字架の上に犠牲として捧げることを通して、動物の犠牲を廃止したということです。
 
 さて、今日の福音書箇所で不思議な言葉がありました。それは19節です。
『イエスは答えて言われた。「この神殿を壊してみよ。三日で建て直してみせる。」』
 これはどういう意味でしょうか? 
 それには、まず神殿とは何かということを考える必要があると思います。
 神殿とは神様が住まわれる場であり、神様と出会う場でした。聖なる場所であり、宗教生活の中心でした。建築するのに46年もかかった神殿をイエス様は「3日で建て直してみせる」と言われるのです。ここで「建て直す」と訳されている言葉は原語のギリシャ語では「エゲイロー」で、元々の意味は「起こす」であり、「起き上がる」や「復活する」とも訳される言葉です。英語の聖書(NRSV)では、「raise it up」とありました。「三日で建て直す」という表現にはイエス様の体と神殿が重ね合わされており、イエス様の復活を指し示しています。つまり、神殿とはイエス様の体のことであり、別の言い方をすれば、イエス様は復活によって、新しい神殿である教会をうち立てられたのです。
 しかし、弟子たちはこの時点ではこのことを理解できず、イエス様が復活された時、イエス様のこの言葉を思い出し、聖書とイエス様の言葉を信じたのでした。

 ところで、「建て直す」や「復活する」と訳されたギリシャ語「エゲイロー」は英語では「raise~up」でした。この言葉から思い浮かべる曲があります。
 それは『You raise me up』というケルティック・ウーマンの曲で、2006年のトリノオリンピックで金メダルを獲得した荒川静香がそのエキシビジョンで使用した曲です。

 「You raise me up」は直訳すると、「あなたは私を起き上がらせてくれる」という意味です。大切な人が一緒にいてくれることでどれほど強くなれるかを歌ったラブソングですが、この「あなた」は私たちの主イエス・キリストと解釈することができます。
 You raise me up, so I can stand on mountains(あなたは私を起き上がらせてくれる、だから山の上にも立てる)

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 ここでは「あなたが支えてくれるから、私は山の頂にも立つことが出来る」と訳されています。
(以下は和訳のみ)
『あなたが私を起き上がらせてくれるから、嵐の海の上も歩ける
 あなたの支えがあるから、私は強くなれる
 You raise me up to more than I can be(あなたは私を起き上がらせてくれる、私が出来ると思う以上に)

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    ここでは「あなたが支えてくれるから、私は自分以上の自分になれる」と訳されています。

 皆さん、イエス様は「三日で建て直してみせる。In three days I will raise it up. 」とおっしゃいました。それは十字架の三日後に復活することを予告されたのです。そして、復活されたイエス様は、いつも私たちと共におられ、私たちを起き上がらせ支えておられるのであります。

 今日は大斎節第三主日です。大斎節は主イエス様の受難に思いを深める時です。大斎節中になすべき積極的なことは何かと言えば、イエス様の十字架と復活を集中的に黙想することであると言えます。
 今日の福音書箇所である「宮清め」は、十字架につけて殺され、復活したイエス様の体が、この神殿に取って代わることの予告であったとも考えられます。
 私たちはイエス様の十字架の苦しみだけを見るのではなくて、その後の復活の喜びに目を留めたいと思います。そして、いつも私たちと共におられ、私たちを起き上がらせ支えておられるイエス様に思いを馳せ、この大斎節が私たちの信仰の歩みをより深める期節となるように、祈り求めたいと思います。


 *以下のアドレスで2006年のトリノオリンピックにおける荒川静香のエキシビジョンを見る(聞く)ことが出来ます。
   https://www.youtube.com/watch?v=y_74NLQG9tw