オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

降誕後第2主日聖餐式 『主が必要とされるものを献げる』

 1月6日の顕現日に聖餐式がありませんので、本日は顕現日のインテンションで礼拝を行いました。福音書は、「東方三博士の礼拝」の箇所です。今日は、博士たちの礼拝の意味を考え、自分の持てるもので主が必要とされるものを献げるよう勧めました。

『主が必要とされるものを献げる』

<説教>
 父と子と聖霊の御名によって。アーメン

 明けましておめでとうございます。
 今年、最初の主日礼拝を守っています。新しい年、皆様に主のみ守りと恵みが豊かにありますようお祈りいたします。
 本日は降誕後第2主日です。そして、三日後、1月6日が顕現日です。この日には聖餐式がありませんので、本日は顕現日のインテンション(意図・意向)で礼拝を行うこととします。
 顕現日(カトリック日本キリスト教団では公現日)は1月6日で、その日までがクリスマスシーズンで、その日まではクリスマスの飾りを飾ります。
 顕現日は、ユダヤ人ではなく、異邦人の博士たちがイエス様と出会ったことから、救い主がユダヤ人だけでなく、異邦人にも現れて下さったことを記念する日です。ユダヤ教では救いの対象はユダヤ人だけであると信じられていました。しかし、救い主であり、神の独り子であるイエス・キリストは、公に異邦人にも現れたのです。このことを感謝し、記念するのが顕現日・公現日です。

 本日の福音書箇所は、マタイによる福音書2:1-12で、東方の博士たちが生まれたばかりのイエス様のもとを訪れ、礼拝する物語です。
 このアドベントから使っている新しい聖書日課(聖書協会共同訳)では「博士」とありますが、新共同訳聖書では「占星術の学者」でした。しかし、その前の口語訳では「博士」でしたので、以前の訳に戻った形です。原文のギリシャ語はMagi、英語のMagicの語源になった言葉です。どちらにも訳せる言葉です。聖書に博士たちの人数は記されていませんが、イエス様への贈り物が3つだったので一般に「東方の三博士」と呼ばれています。

 東方の三博士たちは何のためにユダヤの国までやって来たのでしょうか?  彼らの国(おそらくペルシア)からユダヤまでは数百キロも離れています。彼らはその遠路を、駱駝に乗ったり歩いたりしてやって来たのです。ものすごい長旅です。何のためにそんなことをしたのでしょうか? 将来、交易関係を結んで利益を得るために顔を出しておいた方がよいと思ったのでしょうか? そうではありません。彼らは預言の成就として神様に立てられた「ユダヤ人の王」「メシア」を「拝む」、ただそのためにはるばるやって来たのです。そして、自分たちが持っている大切な財産である黄金、乳香、没薬を献げて帰っていきました。ここに異邦人による礼拝の原型があります。ちなみに、これが世界で最初のクリスマスプレゼントです。

 なぜ3人の博士はこの3つの贈り物をイエス様にお献げしたのでしょうか?
 いろいろに解釈されますが、その一つを紹介します。黄金は、イエス様が王様であるということを、乳香は神への祈りにささげられる香りでイエス様が神様であるということを、没薬は死体の防腐剤や痛み止めの薬として使われますが、これはイエス様が人々を救うために苦しまなければならないということを意味していると考えられます。彼らの商売道具だとも言われていますが、どれも高価で貴重なものでした。そして、イエス様はこの後、ヘロデ王から逃れてエジプトに向かいます。そこにヘロデが死ぬまで滞在しますが、そのためには経済的に生きるため黄金や髙く売れる乳香は必要であったでしょうし、病気やけがをしたときに没薬も役に立ったと考えられます。神様は東方の三博士を通して、その時のイエス様とその家族に必要なものをお与えになったのだと考えます。
 
 今日の聖書箇所で神様は私たちに何を伝えているのでしょうか?
 3人の博士たちは東の国の人で、ユダヤ人ではありませんでした。つまり異邦人、ユダヤ人にとっては外国の人です。ユダヤ人たちは「私たちは神から選ばれた神の民イスラエルの子孫である」と考えて、他の民族を異邦人と呼び、下に見ていました。しかしその人達が星に導かれてイエス様を礼拝したのです。そして、イエス様に出会った3人は今度は別の道で帰りました。これはつまり、これまでのこの世の富を求める生き方を捨てて、イエス様が示す新たな方向に歩み始めることを示しているのです。

 この絵をご覧ください。ウフィツィ美術館所蔵のデューラー「東方三博士の礼拝」です。

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 この3人の年齢層はどうでしょうか?・・・老年・壮年・青年ですね。どこの世界の人でしょうか?・・・ヨーロッパ・アジア・アフリカの人です。つまりこの3人はそれぞれの年代や人種を代表していると考えられます。神様の福音はすべての人に向けられているのです。そして、恵みを受けた人たちは今度は神様にプレゼントを差し上げるのです。
 イエス様誕生の知らせは、まず羊飼いたちという貧しい人たちへ伝えられました。そして、外国人である3人の博士が星に導かれてイエス様を礼拝しました。神様の愛は、全世界のすべての人々へ向けられています。イエス様はユダヤの人のためだけでなく、すべての人々に救いをもたらすためにこの世にお生まれになったのです。そして、イエス様に出会った人達は生き方が変わり、イエス様が示す新たな道を歩むようになるのです。このようなことを神様は私たちに伝えたかったのだと思います。
  私たちも真の神様である星に導かれて救い主を求めて旅するこの博士のようです。私たちは人生のあるとき、神様の独り子である救い主イエス・キリストに出会い、「神様に愛され生かされている」ということを知らされ、大きな喜びに満ち、主に従うものとなりました。私たちはこの博士たちのように、主キリストを礼拝し、自分の持てるものを主に献げ、プレゼントしたいと願います。私たちの目の前のイエス様とその家族にとって必要なものを。それはつまり、私たちの近くにいるイエス様である隣人に、必要なもの、ニーズのあるものを捧げるということです。
 
 これからの1年、クリスマスの本来の意味であるキリストを礼拝し、自分の持てるもので主が必要とされるものをお献げして、隣人に仕えて参りたいと願います。そして、このような生き方をさせていただけるよう主イエス・キリストによって祈り求めたいと思います。

  最後にお祈りいたします。
天の父なる神様、あなたのひとり子であるイエス様をこの世にお送りくださり、ありがとうございます。イエス様はユダヤ人だけでなく、私たちを含むすべての人々に救いをもたらすためにこの世にお生まれになったことを感謝します。
 遠い東の国からやってきた3人の博士は、救い主である幼子のイエス様を礼拝し、贈り物を献げました。そして、別の道で帰っていきました。私たちもこの博士のように、人生のあるとき、イエス様に出会い、新たな方向に歩み始めました。私たちはこの博士たちのように、主キリストを礼拝すると共に、自分の持てるものを主に献げたいと願います。私たちの近くにいるイエス様である隣人に、必要なものを献げることができるようにお導きください。
 この感謝と祈りを、私たちの主イエス・キリストによって御前にお捧げいたします。アーメン