オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

「The Beatles – Let It Be」に思う

 先主日聖餐式における中心聖句は「わたしは主の仕え女です。お言葉どおりこの身になりますように。」でした。ここの「なりますように」はラテン語では「フィアットfiat」、ある英語訳(NRSV等)では「Let it be」と表されたことを説教で話しました。「fiat」はイタリアの自動車メーカー、「Let it be」はビートルズの楽曲として世界に知れ渡りました。

 今回は「The Beatles – Let It Be」について思い巡らしたいと思います。
 「Let It Be」はビートルズの通算22枚目のシングルとして、1970年3月にリリースされた曲です。そして、ビートルズ解散後に発表されたラストアルバム「Let It Be」に収録されています。

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 この曲は以下のアドレスで聞く(見る)ことができます。
 https://www.youtube.com/watch?v=ToOLuVzMAro

 アルバムタイトルの「Let It Be」は、”あるがままに(御心のままに)”と訳せます。
 歌詞の内容は、苦境にいる主人公が “Mother Mary” (聖母マリア) から「あるがままに(御心のままに)」という知恵ある言葉を授かる、というものです。
 この曲は、ポール・マッカートニーが見た”ある夢”がインスピレーションになっているそうです。その夢とは「ポールが14歳の時に亡くなった実母のメアリー (Mary McCartney) が現れて言葉を告げる」というものです。
 歌詞に登場する”Mother Mary”は、ポールの母メアリーとも、聖母マリアとも受け取れます(ポールによると、どちらに受け取ってもよいそうです)。
 また、この曲は「ビートルズ解散が避けられない状況になった時のポールの辛い心境」を反映したものとも言われています。

 歌詞と和訳を示します。

When I find myself in times of trouble Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom Let it be

And in my hour of darkness She is standing right in front of me
Speaking words of wisdom Let it be

Let it be, let it be, let it be, let it be 
Whisper words of wisdom Let it be

And when the broken-hearted people Living in the world agree
There will be an answer Let it be

For though they may be parted there is Still a chance that they will see
There will be an answer Let it be

Let it be, let it be, let it be, let it be
Yeah, there will be an answer Let it be

And when the night is cloudy There is still a light that shines on me
Shine until tomorrow Let it be

I wake up to the sound of music Mother Mary comes to me
Speaking words of wisdom Let it be


苦境に立たされている時 母なるマリアが現れ
知恵ある言葉をかけてくれる 「あるがままに」と

暗闇の中にいる時 母が目の前に立ち
知恵ある言葉をかけてくれる 「あるがままに」と

あるがままに、あるがままに、あるがままに
知恵ある言葉をささやいてくれる 「あるがままに」と

心に傷を負った人たちが この世界で共に暮らす時
答えは見つかるだろう あるがままに

離れ離れだとしても 再び巡り会うチャンスは残されている
そこに答えがあるのだろう あるがままに

あるがままに、あるがままに、あるがままに
そうだ、そこに答えはある 「あるがままに」

雲が立ち込める夜も 明かりはずっと照らしてくれる
夜明けが訪れるまで あるがままに

音楽が聴こえて目を覚ますと 母なるマリアが現れ
知恵ある言葉をかけてくれる 「あるがままに」と


 ここでは「Let It Be」を、”あるがままに”と訳しましたが、先主日の説教でもお話したように、この言葉はギリシャ語では「主の祈り」の中の「み心が天に行われるとおり地にも行なわれますように」の「行われますように」と同じ言葉です。さらに言えば、「ゲツセマネの祈り」におけるイエス様の「私の望みではなく、御心のままに」(マルコ14:36)の「御心のままに」も連想させます(ラテン語ではいずれもfiat)。これらのことから「なりますように(fiat、Let it be)」とは「御心がおこなわれますように(神様の思いが実現しますように)」ということだと言えます。
  「Let It Be」という言葉がビートルズによって世界中に広まりました。それは素晴らしいことです。そしてこの言葉が、マリアが天使ガブリエルへのイエス様を宿ることの承諾の言葉であったことを心に留め、自分の「あるがまま」が神様の御心と一致できるよう祈り求めます。「Let It Be(御心のままに)」という人生を送りたいものだと思います。