J・ベイリー著「朝の祈り 夜の祈り」に思う
先日、前橋市城東町のキリスト教書店「ハレルヤブックセンター」の古書コーナーにジョン・ベイリー著「朝の祈り 夕の祈り」があったので、購入しました。300円でした。
この本には、20世紀スコットランドの霊的指導者ベイリーによる、1か月31日分、さらに主日の朝と夜の祈り、計64種類の祈りが掲載されています。ベイリーは「エジンバラ大学の神学部長とニューカレッジの校長を務め、スコットランドにおける女王付牧師であり、世界教会会議の議長の一人として選ばれた」(P.141)と訳者あとがきにあります。訳者は、日本基督教団の牧師で、青山学院大学教授や日本聖書協会総主事などを務めた新見宏です。
この本の奥付に「1958年12月25日初版発行 2006年6月23日61版発行」とありました。以前購入した同書には「1992年4月15日55版発行」とありました。発行当初ほどではないにしろ、今も版を重ね、長く、広く、教派を超え愛読されていることを物語っています。
この本の序文の「これらの祈りは補助と考えていただきたい。朝夕の祈りの全部として、あるいはもっと個人的な祈りにとってかわるものとして考えられてはならない。~中略~これらの祈りは個人が用いるにふさわしく、公同礼拝の式文祈祷として作られたものではない」(P.3)という著者の言葉の通り、これらの祈りは祈祷書にあるような公祷ではありません。しかし、本書で毎日紡がれる祈りの言葉は格調高く、日本語訳も美しいと感じます。
私はこの種の毎日日替わりの祈りの本をこれまで数多く読んできましたが、その中でも本書は私にとってしっくりくるとともに、祈りの模範とも言えるものです。特に、神から与えられることを願い、他者のために祈る代祷(執り成しの祈り)を行っていることが大切と思います。
例えば29日朝の祈り(P.124)はこうです。
『 全能の、あわれみふかい神よ、あなたの力と愛とは永遠にともに働いて、 あなたの子らを守ってくださいます。きょう、わたしがあなたを信頼するこ とができますように。
父よ、わたしは祈り求めます—――。
あなたが真実と愛とをもって世を支配されることを信ずる信仰を
もしわたしがまず神の国と義を求めるならば、あなたはそれ以下の必要なものをすべて与えてくださるという信仰を
あすを思い煩うことなく、きょうまでのあなたのあわれみが引きつづいて与えられると信ずる信仰を
現代のさまざまな出来事のうちにくりひろげられている、あなたの愛のご計画をさとる信仰を
わたしが務めを果たすときに出会うさまざまな危険に、冷静に勇敢に立ち向かう信仰を
わたしのかたくなな心をとかしわたしの罪をのみつくすあなたの愛の力を信ずる信仰を
他の人びとがわたしに対して敵意を持つとき、力よりも愛にたよる信仰を
病や死や、すべての暗黒の力に対する、あなたの御霊の最後の勝利を信ずる信仰を
あなたがわたしに負わせてくださる苦難から益を受ける信仰を
わたしの親しい人びと、ことに……と……の幸福をあなたのみ手に委ねる信仰を
神よ、わたしの父祖はみなあなたを信頼して、迷うことがありませんでした。いまわたしのたましいからむだな心配や、力をうばい去る恐怖をとりのぞいてください。わたしに喜ばしい、元気な精神と、あなたのみこころを行うときに生まれる平和をお与えください。
キリストのゆえに。 アーメン』
いかがでしょうか? 神への賛美や感謝、祈願や代祷などが述べられており、私にとっては、読むだけで自然と信仰が養われる「祈り」のように思っています。
このような祈りが生まれた秘訣については、以下の本、J・ベイリーの説教集「眠りの神学」に記されていました。
この本の末尾のベイリーの従姉による長い手記の中にあり、こうありました。
『このしずかな部屋(書斎)には、だいじなポイントがあります。それは窓辺の祈りの机で、そこには、使い古したいろいろな版の聖書と祈りと黙想のための本がおいてあります。そこで、自分一人になれるとき、ジョン・ベイリーは、それらを読み、考え、神を拝したのでした。そして毎日、意志と頭と魂を忠実に鍛錬することにより、この偉大な神学者・教会政治家は、なによりもまず、聖く、心のへりくだった人間になったのです。』(P.198)
ここから、著者がいかに学びに熱心で真剣な祈りの人であったかが分かるとともに、日々の神との交わりから、これらの美しい祈りが生み出されたと思わされました。
J・ベイリー著「朝の祈り 夜の祈り」はキリスト教書店だけでなく一般の書店にも陳列されており、現在の価格は836円(税込)です。ぜひ手にとって読んでいただきたいと思います。