オーガスチンとマルコの家

勤務している高崎聖オーガスチン教会や新町聖マルコ教会の情報やキリスト教文化や信仰などの話題を掲載します。

「明日に架ける橋」とキリスト教

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 新型コロナウイルスの感染者への対応にあたるイギリス西部のウェールズの仮設病院の医療関係者らが「サイモン&ガーファンクル」の名曲、「明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)」を歌った動画がインターネット上に投稿され大きな反響を呼んでいるそうです。次のアドレスで見ることができます。https://youtu.be/WXISBPKrf2E
 動画開始約2分後から歌が始まります。医師や看護師、それに病院の建設に関わったスタッフなどが仮設病院内で英語やウェールズ語で力強く歌っています。2001年の9.11アメリ同時多発テロの時もこの曲はよく聞かれました。また、南アフリカアパルトヘイトへの抵抗時はアレサ・フランクリンのカバーがよく聞かれ、現在、南アフリカでは讃美歌として歌われているとのことです。  
 「明日に架ける橋」という曲に困難なことを乗り越える力があるから、そのようなときに聞かれ歌われるのかもしれません。今回、CDを久しぶりに聞いてみると、歌詞は聖書、演奏はゴスペルミュージックの影響を感じました。今回はキリスト教の視点からこの曲の秘密を考察してみたいと思います。
 この曲の成立については、ポール・サイモン自身が、テレビ番組でThe Swan Silvertonesというゴスペルグループの"Oh Mary,don't you cry"という曲からインスパイアーされたと言っています。特にこの中の歌詞、I'll be a bridge over deep water if you trust in my name からタイトルが取られたことはよく知られています。

 サイモン&ガーファンクルは1960年代に多くの名曲を生み出したアメリカのデュオ・・グループです。「明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)」は1970年1月にシングルが発売されるやいなや、世界的な大ヒットとなり、日本でも多くの人に親しまれてきました。以下のアドレスで、セントラルパーク・コンサートの演奏を見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=tUuUr6iS3ao

以下、1~3番の歌詞と訳及び私なりの考察を示します。

1番
When you're weary, feeling small
 When tears are in your eyes,  I will dry them all
I'm on your side  When times get rough
 And friends just can't be found

Like a bridge over troubled water   I will lay me down
Like a bridge over troubled water   I will lay me down

生きることに疲れ果て みじめな気持ちで
ついに涙ぐんでしまう時 その涙を僕が乾かしてあげよう
僕は君の隣りにいるよ どんなに辛い時でも
たよる友が見つからない時でも

荒れた海に架ける橋のように 僕はこの身を横たえよう
荒れた海に架ける橋のように 僕はこの身を横たえよう
 
 I'm on your side(僕は君の隣りにいるよ)、僕はどんな辛いときも隣りにいてくださる方です。 
 Like a bridge over troubled water  I will lay me down. (荒れた海に架ける橋のように僕はこの身を横たえよう)の歌詞は、イザヤ書43章2節、"When you pass through the waters, I will be with you"(水の中を通る時も、わたしはあなたと共にいる。)やマタイによる福音書14章25節、"he(Jesus)came walking toward them on the sea"(イエスは湖の上を歩いて弟子たちのところに行かれた)を想起させます。
 荒れ狂う湖を渡って恐れる弟子たちのところに来てくださったように同伴者であるイエス様が橋となって、私たちを自由で安全な場所へ導いてくださることがここで示されているように思います。

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2番
When you're down and out  When you're on the street
 When evening falls so hard  I will comfort you
I'll take your part  When darkness comes
 And pain is all around

Like a bridge over troubled water  I will lay me down
Like a bridge over troubled water  I will lay me down

君が落ちぶれて 街角に立つとき
夕暮れが冷酷に立ち込める頃 君を慰めてあげよう
僕が身代わりになろう 暗闇が立ちこめ 
苦痛が君を覆い包む時に

荒れた海に架ける橋のように 僕はこの身を横たえよう
荒れた海に架ける橋のように 僕はこの身を横たえよう

 I'll take your part(僕が身代わりになろう)、僕は暗闇の中で私たちの身代わりになってくださる方です。
 それは、私たちの贖罪のために身代わりになってくださったイエス様を想起させます。
Like a bridge over troubled water I will lay me down  は(逆巻く川の流れに架かる橋のように、私は身を捨ててあなたの架け橋になろう」という意味にとることができます。

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3番

Sail on silver girl  Sail on by
 Your time has come to shine
All your dreams are on their way
 See how they shine

If you need a friend  I'm sailing right behind
 Like a bridge over troubled water  I will ease your mind
 Like a bridge over troubled water  I will ease your mind

出航するのだ 銀色の乙女よ 帆を上げて海を渡っていこう
今こそ君は輝くのだ
君の夢はそこまで来ている
ほら眩しい光で輝いているのが見えるだろう

一人で心細いのなら 僕が後ろからついていってあげよう
荒れた海に架ける橋のように 君の心を和ませよう
荒れた海に架ける橋のように 君の心を和ませよう

 silver girl (銀色の乙女よ)の歌詞で思い浮かべる聖句があります。箴言16章31節です。
 Silver hair is a beautiful crown found in a righteous life.(白髪は輝く冠、神に従う道に見いだされる。)
 私もシルバーエイジになり、髪の毛も真っ白になりました。その者が出航するのです。それは神に従う道です。その向こうにあるのは「光で輝いているところ」なのであります。一人で行くのでなく、ついていってくださる方がおられるのです。何という福音(良い知らせ)でしょうか。

 この曲の日本語の題名「明日に架ける橋」も素晴らしい訳だと思います。
 私の考えでは、「明日」=神の国、永遠の命、「架ける」=十字架、「橋」=イエス様ととらえます。イエス様は私たちに永遠の命を与えるため十字架に架かって神の国への「橋」となってくださったのです。キリスト教の最も重要な教義が示されていると考えます。

 今、この曲をピアノで練習しています。ゴスペルタッチの曲も素晴らしいです。
サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」は神が与えた歌詞、曲、演奏だと思います。これを聞く度に、私たちと共にいて神の国に導いてくださるイエス様について思い巡らしたいと思います。